禁止事項とか?
2008-12-06
学校に行っていると校則とか、規則がある。
それは社会人になっても同じなのである。校則と同じように社則と言うものがある。そしてそれ以外にも臨機応変に禁止事項と言うもののおふれが回ってくるのだ。
くどい位に回ってくるところを見ると、守る人が少ない。と言う事なんだろうか(^^;)
まず、どこの会社でも言われるのは、社内のPCでプライベートなサイトにアクセスしない。だろうか。
仕事中は当然っちゃ当然。だけれども休憩時間も然り。である。社内のPCは仕事の為にあるもので、仕事に関係するところ以外にアクセスするのは論外!という事なのだろう。
ましてや、機密漏洩と言う危険性も潜む。
それは厳しく厳しく目を光らせているのである。
一人一人が固定のIPアドレスを持つので、誰がどこにアクセスしたのかは一発でわかってしまうのだ(笑)
いくら何でもそんな手間暇な事はしないだろう。と思ったら大間違いで、今までにも幾人かが挙げられてたりする。
自分は昔むかし、遙か昔にはネット管理者をやっていた事もあり、公私のけじめはつけたいので、休み時間に個人所有のPDAしか浸かった事がないけれども、今度はそれより遙かに厳しくなっていた。
職場内への情報機器の持ち込みは禁止である。
デジタルカメラ・・駄目。
携帯電話・・・・・駄目。
PDA・・・・・・・・・駄目。
オーディオ・プレーヤー・・・・駄目・・・・・(笑)
休憩時間といえ一旦職場へ入ってしまうと外界へは出られないので、家を出るまで、家に返るまで娯楽?の対象は手元に置けない。
厳しい・・・が、仕方がない。
時代が時代なのだ。そういう事にしておこう。
実は、この記事ちょっと前に書きかけていたのだけれども今回、橋下知事が学校での?だったか、ケータイ禁止なる発言をしたらしいので、ちょどいいや、つ続きを書くことにした。
つまり、わたしは賛成な訳である。
GPS機能とか安全性についても指摘はあるが、なら就学中だけ禁止する。とか、大人になってもこんななのだから、子供のうちに特別必要でもない、どうでもいいことくらい我慢できる気持ちを養うのもいいんでないか?
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品質とはなんぞや・・・とか?
2008-12-06
どこもかしこも品質を売り物にしている。
さて、品質とは何であろうか。
考えてみる。考えてみる。考えてみる。考えて・・・・いや、いつも考えているので今更考えるまでもないが・・・(^^;)
わたしにとって品質とは
『安全性』
その一言に尽きるのだ。
たしかに性能とか使い勝手だとかいろいろあるわけだが、まず真っ先に来るのが『安全性』なのだ。
どんなに使い勝手がよくっても、どんなに高機能・高性能な製品であっても、どんなに安くっても安全性が二の次になっていてはならない。
さて、短いサイクルで回す製品。本当に安全性は大丈夫なのか?
何よりも安全性重視でやっているだろうか。
外部検査機関に任せて通ればOKではお粗末である。
確かに安全性は、見た目にはわからない。
外にアピールできるようなインパクトはないだろう。
営業は売り込み易さを求めて一目でユーザーにわかる機能を求めてくる(営業努力しろよっ!!)
無理な日程を詰めてくる。
顧客も急ぎ商品が欲しいと駄々をこねる。
全てが急ぎ足で駆け抜けていく。その中において安全性にどれだけ重点がおけるのだろうか。
評価も最終段階になってくると性能(機能)評価にばかりなってくる。
わたしは見た目の派手さよりも、地味でも地道に安全性を詰めていきたい。
さて、電気回路、線が繋がって電気さえ流れれば回路は動いちゃうものなのだ。
動いたから問題ないのではなく、動いた上で全てのスペックを満足しているかの地道な評価が必要だ。それを後回しにして見た目の動作ばかりを追いかけていては、安全性のチェックが完璧とは言えない。
いつの時代も安全性が一番であるというのは自分自身ずっと思い続けていることである。
と、前にも書いたかな。
それともどっかのブログだったか・・・・なあ、いいや、常日頃思っていることだから。
第3章 叛旗 3
2008-12-07
大声で泣き叫ぶ娘の声は啜り泣きへと変わり次第に小さくなっていった。
気が済む事はなかったが、誰はばかることなく大声で泣いた後には冷静な感情が戻ってくる。ぐいっと腕で涙を拭った。
「お前さんはやることがある筈だ」
落ち着きを取り戻してきた娘に言った。
娘はアークの言葉に何の為に村を出たのかを思い出して顔を上げた。
しかし、今度はその顔が恐怖に歪む事になった。
娘の瞳にアークと、その背後に気配なく立つ騎馬兵の姿が映る。娘の表情に異変を察知しアークは振り向いたが、その彼をめがけて、騎馬兵の高く挙げられた剣が勢いよく振り下ろされた。
ふいをつかれたアークは娘を突き飛ばすのが精一杯で剣を抜く間もなかった。
打ち下ろされた剣をそのまま肩からけさがけにかけて受けて地面に倒れ伏した。冷たい土と流れ出る生暖かい血の感触がする。
兵たちに捕らわれる娘の声を耳にし立ち上がろうと藻掻くが身体はままならない。やっとの事で開いた目には娘を連れ去る騎馬軍団の後ろ姿が映ったが、それはすぐに小さくなりやがて視界から消えた。
目の前は段々と暗くなり、アークはそのまま意識を失った。
娘はそうして凶王の居城に捕らわれた。
アークの後を追ったラウは行き違いになる騎馬軍団を身を隠してやり過ごした。
蹄の音が完全に聞こえなくなると再び馬を飛ばす。
しかし、慣れない道にラウは所在を失った。そこへ姿を現したアークの馬に導かれやっとアークの元へと駆けつけた。
血塗れで倒れたまま動かないアークの元へ走り寄るとアークの息を確認する。青ざめた顔のラウは安堵の息を洩らす。
「この馬鹿が・・・・」
急ぎ適切な処置を施し、周りに誰もいない事を確認すると馬へアークを括りつけやってきた道を戻る。
宿屋では血塗れの状態のアークに店主を始め客たちがしきりに慌ただしくなった。
アークの身を案じ、店にいた男たちの表情は暗く沈む。
予断を許さない状態が続く。
古くから戦が終わる度に通い付けるアークは、殆どの客と馴染みになっていた。その人望も厚い。
「俺はもう、何も出来ずにただ知人を見送るだけなんてのは厭だ」
重苦しい空気を破って、男の一人が口にした。
「俺もだ。ラウ。お前はアークから詳しい話を聞いているんだろう?俺も仲間に加えてくれ」
一人、また一人と立ち上がるとラウの元へと押しかけた。
娘が店に入ってきたあの時、アークは男たちを集めて凶王に対抗するための解放軍を組織する構想の話をしていたのである。
あの時は誰もが夢のような話だと笑っていたが、ここに来て皆の決心が固まった。
アークが目を開けたのは、それから3日目の夕暮れだった。
意識を取り戻したアークは寝台から飛び起きようとしたが、目眩を起こしてそのまま、また寝台の上に倒れ込んだ。
「おい、無茶をするな」
側に付き添っていたラウが声をかけた。
頭上から聞こえてくる声に目を開ける。
「ラウ・・・そうか、俺は・・・・」
心配そうに覗き込む顔に、事の次第を思い出していた。
「心配させてすまなかった」
謝るアークにラウは仕方ないという風に微笑む。
「アーク!目を覚ましたのかっ!?」
戸口から聞こえた声にラウは目を向ける。アークもラウの視線を追って戸口を見た。
そこにも心配そうに中を覗き込んでいる見慣れた顔が並んでいる。
「あんたにいい知らせだっ!」
押し合いへし合う男たちの一人が言った。
「アーク、俺たちゃ、あんたの話に乗るぜ」
「そうだ。既に数人が隣国へ向けて人集めに旅立ったぞ。凶王から自由を取り戻そう」
男たちは口々に叫んだ。
目覚めたばかりのアークはやっと事態を飲み込んだ。
「ラウ。これは、どういう事だ?」
ラウに向けられたアークの表情は険しい。
「おい、お前たち、アークはまだ疲れている。下に行って静かにしていろ」
宿屋の店主が集まった男たちを追い払いながら入ってきた。
ラウはアークの視線を受けて黙って立ったままである。
「何を・・・言ったんだ?彼らはちゃんと理解しているのか?」
静かな声ではあったが、その声に抑揚はなく怒りを抑えているのがわかる。
「おいおい、ラウを責めちゃ可哀想だぜ。ラウは何も言っちゃいない」
店主が間に入る。
店主の言葉通り男たちに取り囲まれたあの時、ラウはただ首を横に振るだけで一言も発さず黙ったままだった。
寝台から動けないアークは今度は店主の方を見つめた。
「お前さんは何か勘違いをしている。これはわしら皆の問題だ。何もお前さんの為だけじゃない。奥深い山林に匿ったまま会うこともままならん妻や娘と普通に暮らしたい」
「しかし、俺は・・・・・・」
「テーベの民だから?口癖だな。分かってるさ。お前さんは、お前さんの目的を果たせばよい。わしらはわしらの目的の為にやる。ただそれだけさ。例え、最終の目的は違っても今ある目的は同じ筈だな?誰も恨み言を言いやしない。どっちにしろ、もう動きだしちまった。腹を決めろ」
『虐げられる人々の解放』
それを指す店主の言葉には、有無を言わさない強い調子が込められていた。
「・・・・・・ああ、そうだな。結末は神のみぞ知る。だ・・・・。」
全ての流れは必然だったのだと心を決める。
「おっと、冷めちまうな。スープを持ってきた。食べられるな?来る日の為に体力を付けてくれよ」
アークは寝台の横に添え付けられている小さな台の上に置かれたスープから上がる湯気をじっと見つめた。
「わしは下へ降りるが・・・・ラウ、そいつにしっかりと食わせてやってくれよ」
店主はラウに念を押してその場を離れた。
「手を貸してくれ」
「無理はするな?」
ラウは敷布の中の一枚を丸めてアークの背に当てながらその身を起こすのに手を貸した。
痛みを堪えるために息が止まる。用意された敷布にもたれかかると深く息を付く。
「どうしてそんなにテーベの都に拘る?」
ラウのその言葉にアークはただ黙って笑うだけだった。ラウもそれがわかっていながらつい同じ質問を繰り返す。
二人は凶王に抗う戦で出会った。他国の出身のラウは凶王がかつて賢王と呼ばれていたこの国を、テーベの都の昔を知らない。アークは過去について多くは語らなかった。
散った男たちからの情報を頼りにアークの元には各国・各地からぞくぞくと人が集まってくる。それにはサクの村が滅ぼされた噂が大きな影響を与えていた。
神のいなくなったとされるこの大陸で、豊穣の女神レーガ神の眠る地として暗黙に結ばれていた不可侵の約束。サクの村は唯一人々に残された希望だった。
それを踏みにじった凶王に対する怒りが人々の心に火を付けたのだ。
瞬く間に広まる噂と共に次々と人々は蜂起し、アークの元に集い号令がかかる日を心待ちにする。
しかし、アークの傷が癒え元のように動けるようになるまで数ヶ月の時を要した。
事の詳細はラウから常にアークの耳に入ってきていた。人脈に恵まれたアークはその場にいながら各国の状況を把握し凶王の動向を掴む。綿密に策を練り、細やかな指示を出す。それをラウは一糸乱れぬ統率力で遂行する。
東西南北に位置する隣国の遠方より徐々に凶王の無法下に置かれていた土地は開放され、本来の姿を取り戻していった。
時は完全に満ちる。
愛馬に跨り群衆の前に姿を現すアークに割れるような歓声が沸き上がった。
叛旗という複雑な心境を抱きながらもアークは、自分に命を預ける者たちの期待を背負い一路テーベの都へと進軍を開始する。
つづく
国家としての責任・・・とか?
2008-12-07
国家としての責任を果たせと叫んでいるニュースを見た。
誰が言っていたのか・・・・はとりあえず伏せておこう。
わたしは責任という言葉を聞くと義務・権利と連想する。
相手に責任を要求するのは権利だろうか。
この場合、国家ときているので、国民の権利でもって国家に責任を果たせと要求しているのだ。
義務・権利・責任は一方的に押しつけるものではない。互いに負うべきものだろう。とわたしは考える。
万民の指示を得て、国家に対して責任を果たすことを要求するのならば、万民に国民としての国家に対する義務を果たしてもらわなければならない。
支持者も偽善で指示をするのでなければ、己の義務を踏まえた上で、正々堂々と権利としてその主張を後押しするものだ。
聞き入っている群衆の顔を見て、ただ何となくそう思っただけ・・・・・。
いや、別に国民としての義務と言うのはどこぞの偏った論文を振りまいた元自衛隊のお偉いさんの持つ思想とは全く別モンですがね。
たまに誤解をする人がいるので念のために注釈を入れておこう。
さて、もう一つ段階を落として言い換えてみよう。
企業の責任を問うなら、社員としての義務・責任も問いてみてもいいんじゃないか?と思うのだ。
権力を持つ側に対する視線は厳しいが、その下に対しては不問にする。と言うのはどういう了見だろうか・・・・。
世に見るニュース、果たして代表者だけが悪いのだろうか?
ワンマンだった為、知らぬ存ぜぬ、自分たちにはどうしようもなかったと言い訳が通る。
結果的にワンマンである事を許し続けたのは誰だったのだろうか。
不問にし、代表者への責任追及だけに止める事によってその下にも存在するであろう、同罪の人間への無言の圧力である事を認識し罪悪感を感じるような、責任感のある人間が今の世の中に溢れかえっている思えない。(いないとは言わない)
全てが人と人との繋がりが希薄になっている証拠ではないだろうか。我が身の事として受け取れないのである。
人を信じる前にまず疑えと教えなければ我が身を守る術はないと短絡に考える事しか出来ないのだから仕方がない。
ぼけぼけ平和・・・とか?
2008-12-08
まだ、本決まりではないだろうけれども、今現在言われている給付金の受け取りに不満を感じる。
別に特別に助かる・・・などと言う事はなく、あればうれしい。もらえるものならもらっておこう、程度の気持ちしかない。勿論、こんなもので経済が活性化するとは思えない。2兆円ものお金、もっと有意義な事に使えないものだろうか。と内心では思っている。
で、その受け取り方法だが、最初は窓口にて支給。と言う事になっていた。
今は手続きが窓口で、銀行振込。だったか・・・・。
決定でない事に文句を言っても仕方がないが、直接に窓口・・・・。なんて発想が何故出てくるのだろうか。
役所の窓口なぞ平日しか開いてないではないか。
普通に働いている人間が一体その時間にどうやって窓口に行くのだろうか。・・・・つまり、仕事を休め。そういう事なのか?
家計に苦しむ人間に1日の収入をふいにしろと言うことか・・・。まあ、有給取得しろという声もあるけど、全ての人間が有給があるとは限らないし、思考が片手落ちだよなぁ、と思う。
それに一体、どれくらいの人間が押し寄せると思うのだろうか。
混み合うのは目に見えている。
膨大な作業量に人為的なミスも多発しそうである。
そして、それの処理の為にまたまた膨大な人件費が費やされる、税金で・・・・・。
それは無駄な作業じゃないのだろうか。
それとも、それは(一時的な)雇用の促進という事だろうか。
どんなに困窮していても、やっぱり無駄金遣いの大好きな金余り国、日本のイメージがわく。
内情は火の車なのにそれを知っていながらもやはり現実として受け止めている人間の少ないことか。なんて平和な感覚。
企業の下期は全てが下方修正一辺倒だ。
今のところも例外ではない。
今更ながらの締め付けが始まっている。
遅いんじゃないか?ほんの数ヶ月前までつまらないものまで経費で買っていた。これにゃ、驚いた。
その時になって初めて慌てる。
それでも、まだまだ末端部には安穏とした空気が流れている。
上から言われたから経費削減している。・・その程度だ。本当にぎりぎり潰れそうになるまで気づかない。
平和だなぁ・・・・と思う。経済危機・・・と言われるが実際に実感しているのはその荒波に晒されている人たちだけなのだ。どうしようか。とは思わず、自分がその身になるとは露ほども考えていないのに、そうなった時に考えればいい。と思っているのだ。
危機を招くのはそういったところからだ。
どうすればいいか、を全員で考える事が出来るのなら、また事態は違った方向へ動くかも知れない。
上の方の人間は・・・まあ、経営者責任が問われる訳だから、ちょっとは必死か。
これから人件費削減の為に再び大々的に退職者を募る企業も増えてくるだろう。希望退職は募るが強制退職は滅多にはない。強制退職となると、世間がうるさいからだ。
しかし、どうだろう?企業は保身を考えてはいけないのだろうか?
企業が事実上倒産してしまうと、強制退職者どころの騒ぎではない。全ての従業員が路頭に迷うのだ。それこそが正義なのだろうか・・・・。
わたしは”希望”退職は・・・・人件費の節約に繋がるけれども、実は、知材の流出だと思うのである。
退職を希望しても困らない自信のあるトップクラスの実力のある人間が率先してやめていく。
バブルが崩壊した時にも同様の現象があった。そして上から下への技術の継承がおろそかになった。
とはいえ、あの時とはまた状況は違う、資本主義の崩壊が始まっている。現経済大国はますます失速していき、発展途上国の発展も過去ほどの資本の膨らみは産まないだろうと予想する。
別に自分は経済評論家でも何でもないし大した知識もない、だから単なる個人の感想である。
さて、これから時代はどう動くのか。時代を見抜くことが出来るのは誰なのか。楽しそうである。
また歴史に刻まれる一つの時代になるのだろうか。
あくまで他人事のように見る自分は、平和ぼけぼけした人間だからなのか、はたまた全てに希望を失った人間だからなのか、自分自身気づかぬふりをしているそれを敢えて暴くのは控えておこう。
ねこにゃん日記・・・・とか
2008-12-10
冬がやってきた。冬と言えば名物ネコ団子。
ねこが丸まって団子状態になって眠るのである。
先代のねこたちはとても仲が良く7匹が固まる事もままあった。
今の子たちでは見られない光景である。
世代がきれいに分かれているせいだろうか。
先代までは1年おきに増えていったようなものなのでそれぞれに歳が近く、ボス役も心の広いネコで分け隔てなくあとから仲間入りしたねこの面倒を見てくれたおかげだろう。
今の子たちは・・・・10歳台が同時期に2匹。篝はいなくなったが、2匹から6年離れて篝の年代が2匹、そこから8年離れて末っ子がきた。
先の2匹が三毛と白。後の二匹が三毛と白。
二匹二匹で仲良しこよしvs仲良しこよしだった。
後から入った茶虎は上手に二匹二匹の間をいったり来たり。
篝のペアは片割れが突然いなくなってこの冬は一匹でねこ団子になっている。
最初はにゃぁにゃぁ鳴いていたが最近はそれもしなくなった。
不憫で思わず手をかける。かけると先のねこペアが我も我もと割り込んでくる。
今年の冬はネコを構うのに忙しくなりそうである。
両手両足を使って丁度4匹。大変である。
短いです???
2008-12-11
短いです・・・・と言って始めながら長くなっている(^^;
別に話が変わって延びているわけではなく、書き方を変えたので延びてしまったのである。
最初は極力せりふを押さえて『大地のレクイエム』と同じ書き方で進めていこうと思っていた。
それを通せば既に終わっている筈である。
しかし、それでは書きたいことが書ききれないと思って考え直した。
『流転・・・』と同じ構成にしようかと思った。本体を1本通しで書いて残りをサイドストーリーで構成。これでも、主軸の話が終わっている筈である。
どちらもやめた。
全部通しで書いて一本にする事にした。
そしたら装飾部が増えて長くなった。
果たして思ったように書けているのだろうか?
既に自分自身では分からなくなっていている。
よって、今煮詰まっている。
言葉が出てこないのである。
筋はあるのに装飾できないのだ。
早く終わりを書きたくて書きたくて気持ちが・・・いや、頭が付いていかない?みたいな感じか・・・。
第4章・・・・どうやって乗り切るか。
終わりが見えているのに終わりに辿り着けないもどかしさ・・・・・。
年内には・・・・終われないだろうなぁ。
他に書きたい題材が浮かぶのに煮詰まってる間に消えていく。
裁判員制度・・・とか・・
2008-12-12
みんなが困る昼会の所感のテーマ。今話題の裁判員制度・・・・。何人かが触れていた。
裁判員制度。
別にわたしは取り立てて書くことはないつもりだったので、ちょっとタイミングを外したわけである。
本当なら、候補者に書類が発送されたのニュースがあった当たりが一番旬だったろうか(笑)
さて、とやかく書く前に一言、自分が真っ先に感じた事を言っておく。
『うぜぇっ!!』
別に、その一言だけではないが、真っ先の感想だ。非国民と言われようが感じた事は感じたこと。きれい事で飾る気はない。
・人を裁くなんて出来ない。
・本当に正しい審理ができるのか?
・被告に恨まれたらどうしよう。等々の不安がある。
なんて事を思ってもそれは二の次、三の次。
平日だったりしたら、何日間(3日?くらい?)もなんて仕事はどうしてくれる?なのだ。
収入激減も心配だ。
泊まりがあるとかないとか、それも困る。ワンにゃんをどうしたら良いのだ?
一番の心配事である。
正当な辞退の理由がなければ、すっぽかすと罰金を取られるそうで10万円?1日拒否で10万円か、完全拒否で10万円なのだろうか?
ワンにゃんのお泊まり代と欠勤控除を考えると、完全拒否で10万円の罰金でいいのなら、例え1日、日当1万円が貰えるとしても迷わず罰金を選ぶかも。
まあ、そんな風に今まで自分からは何もせずにいたのに文句を言っても決まったものは仕方がない(笑)
それに、別にわたしは今突然に来年5月から施行されると知ったわけではない。
何年前だったか、国会で決まって準備期間があったはずだ。
真剣にその事について考えて、どうしても納得いかないのなら、聞こえないところで文句を言わずにもっと積極的に反対運動を繰り広げれば良かっただけの事。
政府の側からもっと国民に理解を求めるように動くべきだ。と言うのと同様、国民側ももっとわからない事は知るように努力し、意見があるのなら訴えていくべきだ。と思うだけなのだ。共に義務も責任が抜け落ちている。歩み寄りが足りない。
施行間近になってから、やんや、やんやと盛り上がっているのを見て醒めた目でそう見ている。
別にわたしは『うぜっ!』って思っても裁判員制度そのものに反対なわけではない。主旨には賛同する。
生活に余裕があればいくらでも参加してもいい。くらいには思っている。
普通に生活しているだけでは知ることの出来ない世界を直に体験できるのだ。興味深いとは思わないだろうか?
物書き故か?そう思うのは・・・(^^;)
わたしは以下のように思う。
・人を裁くなんて出来ない。
=>大丈夫、人を裁くのではない。罪を裁くのだ。
それに裁判官が3人参加している。裁判官2人以上の同意がなければいくら裁判員全員が有罪としても有罪にはならない。裁量を握るのは結局は裁判官なのだから。
・本当に正しい審理が出来るのか。
=>これも然り、結局裁判官の裁量だ。
とはいえ、審理にかける期間が短すぎるのはやはり疑問が残る。
・被告に恨まれたらどうしよう。
=>今の世の中、普通に生活していても危険は山ほど潜んでいる。あるかどうかもわからない事を心配しても仕方ない。
問題があれば、都度改変していくことを声を大にして訴えれば良いではないか。
とにかくやってみなくっちゃ、始まらない。
さて、国民の義務とは、何も決められた事をただ黙って遂行する事ではない。
うすうすでも、知りながら自分の中で放置しておいて間際になってから文句ばかりを言う事が義務も責任も全うしていない。と思うのだ。
疑問があったのなら最初っから、真っ向勝負で挑んでいけばよいのだ。
それが国民の持つ義務であり責任なのだと思う。そして権利でもあるのだ。
政府も国民も大人ならば知らぬ存ぜぬと駄々をこねるな。前もっていろんな事を考える癖をつけるべきである。やむなく出来ぬ場合は潔く諦めて前向きに受け入れろ。といつも心の中で思うのだ。
今この時期、やるだけの事をやってきた人だけが文句を言う権利があると思っている。
あと興味深いのは、守秘義務。
これを守れる人間がどれだけいるのだろうか。
匿名性の高いネットでおもしろおかしく配信する人間がいそうだ。
終生の守秘義務なのだと肝に銘じなければならない。それを破ると罪に問われるのである。自分が裁かれて拘置所に入ることもある訳である。
各人のモラルの低さが露呈する事などなければよいが・・・ど。
一番最初の裁判員なんて、きっと楽しいぞ。っと・・・・。
お釣り・・・・とか?
2008-12-13
買い物をする。
代金を支払う。
丁度の支払いや小銭だけのお釣りなら良いけれど、札と小銭がお釣りになる時がどうしても発生する。
そういう時は、販売員さんのお釣りの返却方法に困るときがある。
普通に財布は小銭と札は分かれているものだろう・・・え?違う・・?
わたしの財布は分かれているのだ。札と小銭をごちゃ混ぜにはしない。だから分かれているものとしよう。
どちらが先でも良いけれども、大きいお金と、小さいお金で分けてお釣りを返してくれるお店はありがたいのである。お札が先なら、まずお札を確認してからお札を財布にしまい、小銭を受け取り、小銭入れにしまう。反対でも同じことである。
手際よくしまうことが出来る。
ところが、お札の上に小銭をのせて返してくる店員さんも多い。
一度に札と小銭を渡されるので、手間取るのである。すぐにレジから離れることが出来ない。または歩きながらお金をしまう羽目になる。たまに小銭を落として転がしてしまう事がある。
これは、不親切なのだろうか、それとも普通なのだろうか。
僅かな気配りだと思うのだけれども、そういう返却方法が好ましい人もいるのかもしれない。
でも、わたしはそうではない。
一緒くたに返却された時は、もうとりあえず財布に入れずにそのままの状態でぐちゃっと適当なところに放り込む(^^;)
だって、いらつくんだし・・・。
それと同じでクレジットで買い物をした時もそうである。
最近は、品物や金額にもよるけれどもノーサインで買い物の出来るところも増えてきている。
カードリーダを通したあと、控え兼レシートが出力されるまでに僅かに時間が掛かるので、先にカードを返却してくれる人がいる。
控えとカードは入れる場所が違うので、カードを先に返してくれると、手際よくしまう事が出来る。
ところがこれまた、控えが出てくるまでカードを返却してくれない人もいる。
昔なら、カード番号と印字結果を確認する、とかもあっただろうが、最近は、セキュリィティの関係からカード番号の記載はしない。
控えが出てくるまで店員さんがカードを握りしめている理由がよくわからないのだ。
そして、たらたらと長いレシートを折らずにそのままの状態でカードと返却してくる人もいる。
カードとレシートをいったん別々にしてカードを財布に入れレシートを折って財布に入れる。
混み合った場所で立ち止まってそれをするのは、非常に無駄が発生する。
細かいだろうか?
でも、無駄を省き手際よく全てを回したいのだ。
自分という人間はこの上なくわがままなのだ(笑)
だから、レジ一つとってみても、僅かな事を見極めて相手が手際よく出来る方法を瞬時に判断出来る人は貴重だと思う。
道を聞かれ・・・とか
2008-12-14
夜、犬を散歩させていると道を聞かれる事がよくある。大型犬の散歩なので、散歩をする距離はそこそこ長い。町をまたいで散歩に出かける。・・・とは言っても隣の町がすぐそこなだけでもあるが・・(^^;)
場所柄から大抵は葬儀場を聞かれる。
市民会館も葬儀場に使用されるので『○○会館はどこですか?』と聞かれるのだ。
わたしの中で会館=○○会館となってしまっていた。
今朝も犬を散歩させていた。
いつもは夜だけれども今日は日中だ。
それに場所はいつもの隣の町でなく自分の住む町だ。
『○○会館はどこでしょうか?』
車の中から初老のご主人に聞かれた。
わたしの頭の中にはいつもの会館が浮かんだ。
ここからは遠いので近くまでいったらまた誰かに尋ねてください。と近くまでの道を教えた。
しばらく歩いた。
ふっと思い出した。
『○○会館』
ほんの隣の筋の道路に位置する地元の会館である。
追いかけようとしたが、相手は車でこっちは動きの悪い犬連れである。
既に遅かった。
ウソを教えてしまった・・・・・。
ひどく後悔する。非常に申し訳ない事をしてしまった。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。・・・・と何度心の中で謝ってみても当のご本人には伝わらない。
ろくでもない事をしてしまった。
多分、これ暫くひきづるんだろうなぁ。
気になった一言
2008-12-14
いつものようにニュースを見る。気になった一言があった。
相次ぐ大手企業の経営難。人員削減、非正規社員の解雇のニュース。
その中でニュース・キャスターが、『弱い者にしわ寄せがくる、昔であるならば、企業のトップが責任を取って退任していたものを・・・』的な事を言っていた。
・・・・・・・。
そうか?
今回立て続けに発表される企業の減収益はトップ経営陣の経営ミスlか?
例えば、舵取りを間違っての経営難であるならば、そういう台詞も納得出来る。トップのミスを下の者に転嫁するのは間違っている。と叫んでもいいだろう。しかし、今は状況が違う。全体を見通して尚その言葉を吐くのか?そう思う。
誰もが予測し得なかった急激な経済状況の悪化が襲ってきている。
円高が1円進むごとにどれだけの減益になるか知っているのだろうか?
減産に次ぐ減産に仕事などない。
与えるべき労働力を発揮する場もなしに何の収入を得ると言うのだろうか。企業はどこから益を得て、その支出をはじき出すのだろうか?
弱い者を擁護する正義の味方みたいな発言をしたいのだろうか。
しかし、思いつきの企業だけを悪者にしたような発言を時たま耳にすると不愉快だ。
どんな大手でも明日を知れないこの状況に、各企業は努力を惜しんでいるとでも言うのだろうか。
ならば、誰もが職を失わなくても済むように、各企業が収益をあげる方法でも考えてくれ。
定期の取り忘れ・・・とか
2008-12-15
朝の通勤。わたしは電車の中で眠るので、身体が覚えている一連の動作で会社に向かっているようだ。
たまに会社へ着くまでの記憶が欠落している場合がある。
特別な事件がない限りは殆ど行きの事の記憶が残らない。
そんなある日、いつものように改札を出た。
自分はICカードだ。僅かばかりも動きが止まる事がない。
足は既に改札機を通り抜けていた。改札で警報が鳴っているのに気が付いた。
目の端に取り忘れの定期券が映る。
誰のだろう・・・・少なくともわたしのものではない。前の人か?瞬時に判断して前を見たが前の人は素知らぬ顔をしてずんずんと前を歩いている。
取り残された定期を取って走って追いかけなければ・・・駅員さんに届けなけば・・・・瞬時にそう思ったが、後ろの人もICカードで詰まっている。
身体いつものように何事もなかったように一連の動作をして進んでいた。
頭だけが働いた。
結局何もせずに通り過ぎ、次の乗り換え駅へと向かう。
ずっと気になっている。
前の人のだったかも知れない。
気が付いた時困ったかも知れない。
追いかければ間に合ったかも知れない。
そう思うのに行動出来なかった自分に落ち込む。
・・・確かに朝の通勤時間、後続の人はいっぱいいるので誰かが駅員さんに届け出ただろうけれども、気が付いていながらそのまま行った自分がイヤになる。
第635回「現実は厳しいなぁと感じた瞬間」
2008-12-16
現実は厳しいなぁ・・・と感じた瞬間ですか・・・。
現実は厳しいものでしょう(笑)
もう厳しさなんてものは日常的になっているので、いつ頃瞬間として感じたのか、既に記憶にありません。
反対に現実って、もしかして・・・甘い?って錯覚を瞬間的にすることは度々あります。
甘いなんて錯覚をするのはあまり生きていく上で良いことはないので好きではないんですがね、うっかり甘やかしてくれる人たちが沢山いるもので困ってしまいます。
他人が厳しいのか、世間が厳しいのか、自分が厳しいのか・・・・。
何をもって厳しいとするかは人それぞれでしょうが、わたしは自分に対して厳しくありたいとは思います。
まあ、思うのと現実は違うので、思い通りに自分に厳しくなりきれない。そこが厳しいですかね。
野党の法案もどうなんだろ・・・・
2008-12-17
一時しのぎの雇用促進ってどうだろうか・・・。
わたしはやっぱり、今の経済状態で企業に押しつけるのはどうだろうか?と疑問を持つ。
この不景気がいつまで続くかわからない。
助成金が出たところで黒字のところならいいけれども既に赤字でその赤字も続けばどんなに大手の企業でも息切れをする。
企業が倒れてしまえばその先はない。
体力があるならともかく、製造業となると今一気に減衰していっている状態ではないだろうか。
今、過剰人員は言ってしまうと製造業となるのではないだろうか。
別に我が身が安泰だから言っている訳ではない。
自分すら明日をも知れぬ身である。
しかし、やっぱり先の先・・・を見ると、次の世代の為にも企業には出来るだけ体力を温存しておいてもらいたい・・・とも思うのである。
そして、たかが先の知れているこの身は、忍び難きを忍び、耐え難きを耐えこの時代を頑張って乗り切るしかないと思うのだ。
子供の頃に人一倍頑張って、安泰職につかなかった我が身を呪うしかないさ(^^;)
なんたってキリギリスだし・・・・。
【短編】情炎 ~茅子~
2008-12-18
その夜、辰哉はなかなか寝付けないでいた。コト・・・・
夜更けに奥の部屋から聞こえてきた物音。
奥には15も歳の離れた妹、茅子の部屋がある。
まだ眠っていなかったのか。
ぼんやりとした頭で茅子の事を考える。
早くに父母を亡くし、辰哉が親代わりとなり大事に守り育ててきた妹だ。
豊かな黒髪に長い睫毛に縁取られた黒めがちの大きな瞳、透き通るような白い肌に桜色の頬、濡れたように艶やかな紅い唇、日本人形のように美しい姿に鈴の鳴るが如き涼やかな声。
年頃になり、一層その美しさを増していた。
美しい茅子の噂は隣町にまで届き、最近では縁談話がひっきりなしに舞い込むようになっていた。
夕飯時にその茅子が、突然妙な事を口にしたのだ。辰哉は思わず茅子を厳しく叱責していた。
紅く魅惑的な唇から漏れ出た茅子の言葉を思い出す。
「ありえない・・・」
そう呟いて首を振ると布団を頭から被った。
しかし、無性に妙な胸騒ぎがする。
一度は深く被った布団をはね除けて、起きあがると急ぎ茅子の部屋へと足を運んでみた。
茅子の部屋にはまだ煌々と明かりがついている。
そしてその明かりに照らし出された人影は、宙でゆらゆらと揺れていた。
あり得ない空間に浮く影の有様が辰哉の頭に恐ろしい想像を浮かべさせる。
脈は速まり心臓は鷲掴みにされたように痛み出す。息をする事さえ忘れ廊下に座り込む。
青ざめた顔でいざって進む。
障子に手をかけるが、その手を動かすことが出来ない。
自分の鼓動だけが速く大きく耳に付く。
辰哉はきつく瞼を閉じ、手に力を込め思い切って障子を引いた。
異臭が鼻をつく。
「かやこ・・・・」
恐れから目を開けることが出来ずに妹の名を呼ぶ。しかし、返事はない。
開け放った障子は閉じた瞼越しに光を届け、部屋の中で揺れる影をはっきりと映す。
辰哉は恐る恐る瞼をひらいた。
突きつけられた現実に愕然とする。目に飛び込んできた光景を信じたくはなかった。
なのに今度は開いた目を閉じる事が出来ない。瞬きもせずまます大きく大きく見開いていく。
ゆらゆらと揺れていたのは天井の梁に襷をかけ首を括った茅子の影だった。
美しかった姿は微塵もない。
顔を歪ませ目を剥き、半開きの口からはだらしなく赤い舌が覗く。
弛緩した筋肉のせいで身体中の穴という穴から排泄物は流れ出し畳を汚す。
変わり果てた茅子の姿に辰哉は両手をついて完全に座り込んでしまった。
しかし、すぐに辰哉は震え、がくつく膝を押さえて立ち上がると、梁に掛かる襷を外し茅子を下ろした。
茅子を床に横たえ、警察に電話をしその到着をまつ。
目の前の動かぬ茅子を前に辰哉には言葉もなく涙もない。
その視線の先は何も捉えずただ淡々と行動する。まるで心を揺るがす出来事など何もなかったかのような機械的な動作。
今の辰哉に心は宿っていなかった。
映画か何かを見ているかのように、冷めた目で一歩離れた場所から傍観する自分を感じていた。
遺書などは見つからなかったが状況から判断して警察は自殺と断定した。
茅子を永遠に失った事実を前に辰哉には今一つ現実味がわいてこない。
葬儀はしめやかに執り行われ、辰哉は全ての物事を冷静に処理していく。
みなは口々に不思議がった。
旧家に生まれ育ち、親の縁には薄かったものの只一人の兄に溺愛され何不自由なく育った誰もが羨む娘、それが茅子だった。
葬儀は滞り無く執り行われていく。終盤に近づいた頃、辰哉の前に一人の女がそっと近づく。
女は姿子といい、茅子を育てる辰哉と長く付き合ってきた幼なじみの恋人である。
少しとうがいっているものの美しい面もちの清楚な美人だ。
「辰哉さん、わたしにお手伝い出来る事はあるかしら・・・」
居並ぶ親戚たちの手前、遠慮がちに声を掛ける。
「ありがとう、でも大丈夫だから、一人にしておいてくれないか」
姿子は黙って辰哉の言葉に従う。
落ち着き払って見える辰哉のその心の奥底を思うと何も言えない。
弔問客は去り、親戚も一人、また一人と慰めの声を掛けながら帰っていく。
人の気配の消えた広い屋敷内に辰哉一人が取り残された。
閉め切った部屋の中には線香の匂いが立ちこめている。
微笑む茅子の遺影を前に最後となった夜を思い出していた。
あの夜、辰哉は多くの縁談話に上機嫌で茅子に似合いの男性を見繕っていた。
「茅子はどの方の元に嫁にいきたい?」
そんな兄の様子とは裏腹に歳の離れた妹は浮かない顔をしている。
「嬉しくはないのか?こんなに沢山の方がお前を是非にと望んでくれているのに」
「あにさまは、わたしが他の方のもとに嫁ぐのがそんなに嬉しいのですか?」
「おかしなことを言う」
笑いながら辰哉は数年前、茅子を訪ねてきた男友達に胸がちくりと痛んだ事を思い出していた。
辰哉の態度に茅子は手にしていた箸を膳の上に揃えておくと、ついと後ろに下がった。
そして姿勢を正し両手を揃え、つつっと辰哉に向かって膝を進めたあと深く頭を下げた。
「どうした?」
「あにさま、茅子はずっとこの家におりとうございます」
震える声で頭を下げたまま、そう願い出る茅子に辰哉は戸惑った。
茅子はもう22歳。決して早い縁談ではない。何がそんなに厭なのかわからなかった。
「茅子、華の盛りは短いぞ。請われて嫁にいく。お前にとってこれ以上の幸せはあるまいに、何をそう厭がるのだ」
茅子は頭を畳に付けたてただ黙って首を横に振り続けた。
「茅子・・・黙っていては分からない。訳を言ってごらん」
茅子は手を突いたままようやく顔をあげた。
少し乱れた前髪が額にかかる。
きゅっと結んだ口で思い詰めた顔のその目は真っ直ぐ、と辰哉を見つめる。
辰哉はそんな茅子の目を見つめ返した。
茅子がやっと重い口を開いた。
「茅子はあにさまを、あにさまだけを幼い頃よりただ一人の殿方としてお慕い申しあげております。後生ですからお嫁になどやらないで下さいまし。どうかいつまでもお側に置いて下さい」
「ばかなことを・・・何を言っているのか自分で分かっているのか」
突然の最愛の妹の告白に辰哉の声がうわずる。
動揺する兄を前に茅子は目を閉じてすぅっと息を吸って吐いた。
次に開いた瞳には、決意が宿る。
茅子は自分の手で着物の胸元をはだき、畳の上をすっと擦り寄ると辰哉にしなだれかかった。
茅子の露わになった白い乳房に目が釘付けになる。
辰哉は逆流する血が身体の一点に集中し膨張するのを感じていた。
茅子の白い細い腕が辰哉の首に回される。
「あにさま、せめて一夜だけでもお情けを頂戴しとうございます」
美しい茅子の妖艶な紅い唇が紡ぐ言葉は、兄という立場の辰哉にとっても極上の誘惑になった。
しかし辰哉の理性はその誘惑に打ち勝つ。
熱を帯びた身体で縋り付く妹を自分から引き放した。
「あにさまっ!」
拒絶された茅子の声は悲鳴に近かった。
「なんと恐ろしいことを・・・・同じ血を持つ兄相手に肉の交わりを願うなど・・・・茅子、今日のお前はどうかしている。頭を冷やしなさい」
立ち上がって部屋を出ていこうとする辰哉の足に茅子は外聞もなく追いすがった。
そうまでして自分を求めてくる茅子の姿に辰哉はぎりぎりの理性が吹き飛びそうになる。
辰哉の手は思わず茅子の頬を打った。手をあげたのは初めての事である。まるで自分自身を打ったかのような痛みが走る。
「あさましい真似はやめなさい」
茅子を一人残して部屋を後にする。
背後から聞こえてくる自分を呼ぶ茅子の声に、一層激しく脈打つ己に気づき辰哉は恥じ入った。
「あさましいのは、この身だ・・・」
一人自室にこもり美しい妹に惑いそうになった自分を戒める。しかし、心に反する身体をなかなか鎮める事ができなかった。
茅子がいくら懇願しても自室から出ようとはせず声すら掛けようとしない。
そんな辰哉の態度に茅子の心は絶望の色に染まる。
その深夜、茅子は自ら命を絶った。
「茅子・・・お前はどれほどの決意でもってあの言葉を口にしたのだ・・・」
ひっそりとした部屋の中で少しずつ現実に戻ってきた辰哉は茅子の秘めた胸の内を思い涙した。
問いかける茅子の遺影は何も語らない。
悔いても戻らぬ茅子に掻きむしるように髪を掻き上げる。
その時、目頭を熱くする辰哉の首筋にひやりと冷たいものが触れた。
その感触には覚えがある。
あの夜の茅子の白く細い指。
赤く充血した目を見開いた辰哉が目にしたものは間違えようのない茅子の姿だった。
『あにさま・・・』
聞き慣れた声が耳に響く。
『あにさま』
愛おしそうに兄を呼ぶ。
辰哉は二度と逢えないと思っていた妹の姿に思わずその身体を抱きしめていた。
『この身は、あにさまとの血肉の繋がりなど断ち切りました。最早恐れるものは何もございません』
その言葉は再び辰哉を現実に引き戻した。我に返った辰哉は茅子から離れようとするが、力一杯かき抱く茅子の身体に押さえつけられ身動きがとれない。
『あにさま、後生です。後生ですからあにさまの肉の棒で茅子を裂くように貫いて下さいまし』
相も変わらず、肉の交わりに執着する魂に辰哉は目を閉じた。
「茅子・・・お前は既にこの世にはないものだ」
辰哉の心に恐怖はない。自分を想うあまりに迷う妹の姿にただ哀しみだけが募る。冷静に対処しようとする言葉と心とは裏腹に辰哉の身体は過敏に茅子に反応を示していた。
閉じた目を開けて茅子を見ようとはせずじっと身体を硬くする。
『あにさま・・あにさま・・・』
決して応えてくれようとしない辰哉を呼び続ける切ない茅子の声が一晩中響く。しかしそれも夜明けを告げる鳥の鳴き声と共に闇へと消えた。
闇を照らし出す朝日がまぶしく目に染みる。
辰哉は顔を覆う。目を閉じても茅子の姿が焼き付いて消えることがなかった。
ジリリリリ・・・・と静寂を破り鳴り響くベルの音に電話を取ると受話器の向こうからは姿子の声が聞こえてくる。
辰哉の様子を心配しての連絡だった。
ゆっくりと落ち着いた姿子の声がまるで雑音のように感じる。
恋人の声だというのに頭に入らずただ耳を通り過ぎてゆく。
電話を切った辰哉は寝転がって茅子の事を考えた。食事すら取る気にもならずに、ただ答えの出ない考えを頭に巡らす。
その日から夜な夜な茅子の魂魄は辰哉の元を訪れた。
辰哉はそんな茅子をただ哀しく見つめるだけで触れようとはしない。
茅子も初日の激しさは形を潜め、黙って辰哉の側にいるだけだった。
六日めの夜が明けようとする。
『あにさま・・・茅子があにさまの元に通うことが出来るのは明日が最後でございます。どうぞお心をお認めになって下さいまし、あの日茅子に反応して下さったあにさまのその身体こそが正直なお心ですのに・・・・・』
そう言い残すといつものように夜明けと共に茅子の姿は消えた。
辰哉はその日家を空けた。
向かった先は姿子の家である。玄関のチャイムを鳴らす辰哉を姿子が出迎える。
数日ぶりに辰哉の顔を見て姿子は驚きの声をあげた。
「あなた・・・酷いお顔の色だわ」
辰哉の上着を預かり部屋の奥へと通した。
姿子は慎ましやかな女性だった。慈しんできた妹を亡くした辰哉を気遣って不用意なお喋りを避ける。
黙って辰哉の好物をテーブルの上に並べ燗をくべる。
辰哉は姿子と過ごすこんな静かな時間を気に入っていた。
少し笑みを浮かべ杯に口を付けようと目を落とすその中に、茅子の姿がゆらゆらと揺れる。
辰哉の心が再び騒ぎ出す。
茅子は言った。今夜が最後だと・・・・。
『あにさま』
今頃は屋敷中を探し回り、自分を呼んでいるであろう茅子の声が聞こえてくるようである。
落ち着きをなくし泳ぐ辰哉の目に姿子が少し怪訝な顔を見せる。
「辰哉さん?」
そっと辰哉の手に触れた。
触れる指先に辰哉は茅子の指を思い出す。辰哉の感覚は全て茅子のそれで占められていた。
辰哉は目の前の姿子が火照る肉を解消する為だけの相手であったことに気が付いた。
立ち上がると上着を手に走り出る。
後ろから姿子が呼ぶがそれすら耳にすら入らない。真っ直ぐに屋敷へと戻ると自室でなく台所へと向かう。
包丁を手にすると今度は茅子の部屋へと向かった。忍び泣きが漏れてくる。
障子を開けると主のいなくなった筈の部屋に茅子の姿はあった。
『あにさま』
戻ってきた兄の姿に茅子の顔が明るく輝いた。
「茅子。今ひとたび問おう」
茅子の前に真っ直ぐに立つ。
「お前が望むのはこの身体か?・・・それとも心か?」
『あにさま、何を今更・・・茅子の欲しい物はただ一つ。茅子に向けられるあにさまの誠の心でございます』
茅子の言葉に辰哉は満足げに微笑んだ。
「ならば、お前にくれてやろう。この命、この心・・・」
辰哉は手にしていた包丁を首にあて、躊躇うことなくその刃を滑らせた。
あの日、ゆらゆらと宙に揺れる茅子の影を写した障子を、飛び散る辰哉の血が染める。
瞬く間に血の海となる畳の上に辰哉は突っ伏す。自分を見つめ続ける茅子の姿を映し笑みを浮かべたまま事切れた。
一迅の風が起こる。それは次第に大きな渦となり部屋の小物を飛ばし障子を薙ぎ倒し、外へと空へと向かって巻きあがる。
その中には辰哉の亡骸をしっかりと胸に抱きしめる茅子の姿があった。コロコロと鈴の鳴るような茅子の笑い声が空の彼方からいつまでも響き渡っていた。
翌日、辰哉の元を訪れた姿子は茅子の部屋に残された夥しい量の血痕を見つけるが、いくら探しても辰哉の姿を見つけることは出来なかった。
~ 終 ~
書いた・・・
2008-12-18
何故か突然頭の中に浮かんだイメージ。
四章を書かなければ・・・と、暫くイメージだけで止めていたら比重はどんどんこっちの方が重くなって、いにしえが書けなくなってしまったのだ(^^;)
書いていると話の筋が変な方向に向いていく。
ざっくり削除して、思うままにこっちの短編を優先した。
かなりキテるなぁ・・・。
どうやら自分自身気づかぬうちにもの凄くストレスが溜まっているようだ。
そりゃそうかも知れない。
テレビを付ければ現実味のない政策ばかり、国民軽視と言うその口が語る夢物語に頭痛までする。
不安を煽るのは誰だろう?
さて、短編の評価は兎も角として、書き上げて取りあえずは満足である。
実は後一本短編が頭の隅をちらちらしているのだ。
四章に突入できるか、再び短編を書くのか・・・今はわからない。
・・・にしても見えない目で打ってるので誤変換や多字(笑)がいっぱい・・・。
帰ったら改めてアップしよう。
ちょっと書き換えちゃったりして?
第639回「忘年会やりました?」
2008-12-20
忘年会・・・なしです。
このご時世、自粛規制が入っています。
「それくらい」やって、吹っ飛ばそう・・・なんて思えるほど甘い現実ではありません(笑)
やっぱ、みんな余裕なんだなぁ・・・・。
締めて締めて締めまくってこそ、未来はある。
「それくらい」って思える感覚が自分にはない(^^)
うん、自分の「それくらい」は、こうやって文章を書いている事くらいかなぁ。
本とは「そんな事やってる場合かっ!?」って仕事の状態が続くのが常ですが?それが、何か?
宝くじの確認・・・とか
2008-12-21
夏頃だったろうか・・、確かサマージャンボの発売ゴロだからそれくらいだろう。
宝くじに関するトラバ・テーマを書いた。
・・・そう、自分は宝くじを買うが、結果確認をしないのだ。
年末ジャンボの発売時期が終わった。
・・・・今回は買ってないけど・・・。
年末ジャンボの文字を見て、去年買った年末ジャンボの確認をしなければ、と発売当時からずっと思い続けていたにも関わらず、それでもしつこく宝くじ売場に足を運ばなかった。・・・と言うよりは思い出した時にくじを持っていなかっただけなのだ。
当たり確認をしない、と言う事は同僚も知っている。
昼休憩に顔を合わすと、忘れた頃に「確認した?」と声をかけてくれる。
金曜日にも声をかけてくれた。
そうそう、と昨日その言葉を思い出した。
もちろん持ち歩いているわけではないので家まで取りに戻った。
去年買った分を全部かき集めて袋をあけてバラす。
合計70枚。
そんなに買ってたのか、自分?と気がついた。
末等は必ず当たるので、2100円は戻ってくるな(笑)
宝くじ売場の機械は便利だ。
自分で調べろ。となったら、きっともう挫折してそのままゴミ箱行きは確実だ。
シャッシャッシャ・・・と音がする。
長い・・・・(笑)
金額がピョンと跳ね上がった。
おおっ!!
また金額がピョンと跳ね上がった。
笑みがこぼれる・・・と書きたいところだが、全然胸は弾まない・・・・(^^;)
結果3000円が二枚当たっていた。
売場の人に「今、初夢ジャンボが発売になっていますが、いかがですか?」と進められ、そのまま初夢ジャンボを3セット買った(笑)
来年の年末に同じ事をしているのだろうか。
さて、会社に行ったら奴に報告してやろう。
答えはわかっている。
「そのまま寝かせていたら、手に入らなかった分だから、はい」と手を差し出すのだろう。
そして自分はいつものように
「ネコ缶でいいか?」と聞くのだ。
奴はいわゆるネコ友だ(笑)
大掃除・・・とか?
2008-12-28
昨日、いくつかの記事のアップを試みた。
しかし・・・・どうやら長文だとPCからでないとアップ出来ないようである。
そっちはまた後日にでも、PCからアップし直すとして・・・・・。
さて、大掃除に突入である。
なのに、25日に右手の中指、薬指を負傷してしまい一苦労をしている。
水が使えねぇぇーーーー!!!
拭き掃除が毎年の大掃除では最重点項目なのに、水が使えないのは不便なのである。
ピン・キリで使い捨てポリ手袋を山ほど買ってきた。
しかし・・・すぐに水が入ってくるのである。
しゃかしゃかと作業を用事を終了する事が出来ない。
拭き掃除・・・いつも思うのは部屋中に水をぶちまけてごしごしをこすり、洗い流して自然乾燥・・・・出来たら楽だろうなぁ。だ。
思い切って・・・やってみるか・・・(笑)
でも、明日は雨だから乾燥しきれないだろうなぁ。
と、言うことで却下。
力も入らんので換気扇の取り外しも無理か?
・・・・今回、休み入らないなぁ・・・。
シフト出来るものなら怪我が治ってから、休みを取りたい・・・。
さて、年末・年始のゴミの日をチェックしなければ。
数年前はゴミの日が出勤最終日と重なって、大掃除のゴミ出しが間に合わなくて、ゴミが年越しをした事があった。
今年はせめてゴミくらいは年内にかたずけよう。と今年最後の誓いをたててみる。
ええ子やなぁ・・
2008-12-29
年末の混雑したスーパーの食品売場。
頭上にはPOPがぶら下がっている。
母親の買い物に飽きたのか小学生3,4年くらいの男の子が、そのPOPを飛び跳ねて手で叩きながら歩いてくる。
丁度、すれ違った時である。
子供が叩いていたPOPが落ちた。
通り過ぎた男の子はそれに気づいて振り返る。
わたしは自分の足下に落ちてきたのでそれを拾おうとしゃがんだ。
拾ったPOPを男の子が取り、元あった場所に吊そうとする。
・・・しかし、クリップには背伸びをしてやっと手が届く状態。
それでも頑張って取り付けようとする。
・・・まあ、わたしが付けた訳だが。
男の子はまっすぐにわたしの目を見た。
別に「ありがとう」と言葉があった訳ではない。
でも、ええこやなぁ・・・と思ったのだ。
ただ、それだけの事である。
取り立てて書くことでなく、当然の事なのだけれども、・・・しかし、そのままにしておく大人も多い中、やっぱりちゃんと後始末をしようとするこの子はええこやなぁ。と思うのだ。
、
残りわずか・・・
2008-12-29
さて、本格的な冬。
自分は夏よりも冬が好きだ、
夏の暑さには憎しみすら感じる(^^;)
キーンと冷えた空気に、何よりも夜空がきれいなのである。
・・・ま、こんな冬でもあったかい場所に住んでるからこそ言えるせりふなんでしょうが。
極寒の地域の方は大変です。
冬になると寒いけれども一度散歩に出ると、なかなか帰りたくない、と言う奇病を持っています。
寒さ厳しい冬の夜は、人があまり外に出ていない。というメリットがあります。
あまり人間の好きではない自分にはもってこいの散歩タイムとなります。
気分良く散歩している時に、酔っぱらいや夜遊びのガキやケータイででかい声でしゃべりながら自転車で走る○カともを見ると頭にきます(笑)
爆音を轟かせ走りまくる奴らは○故ってしまえ!と心の底から思います。
人を呪わば穴二つ・・・・。でも、思うんだししょーがねぇ。
静寂こそ、瞑想に耽る必需品。
しかし!
犬がそれを許してくれません。
犬は、瞑想に耽りながら歩くわたしが怖いようです。
自分勝手に歩くくせに自分の方に注目していてもらいたいみたいです。
音楽プレーヤーを聴きながら歩くのも御法度です。
犬の耳には聞こえるのでしょうか?
今年もそんな我が儘な犬につきあいながら年末・年始と一日もかかさずお散歩に明け暮れます。
今年もあとちょっと・・・・さて、踏ん張ろう。
【短編】情炎 ~姿子~ 壱
2008-12-30
民家の明かりも落ちる深夜、点在する街灯に照らされても道は尚、薄暗い。「辰哉さん、どこ・・・」
辰哉の姿を求めて、彷徨い歩く姿子の姿があった。
愛しい男の姿だけを追い求める目は虚ろ。
姿子は、何も告げずに忽然と姿を消してしまった辰哉を思い切ることが出来なかった。
交わした将来の約束だけが胸に灯る。
暗い夜道をひたすらに姿子は歩く、歩く、歩く、歩く・・・・。
そんな姿子の足が止まった。
目の前に人影が現れた。
夜道を往く姿子の姿に勤め帰りに通りすがった男が心配して声をかけてきたのだ。
「こんな夜更けにお一人では危ないですよ。お宅までお送りいたしましょう」
姿子の顔がにわかに明るくなる。
満面の笑みを浮かべ見知らぬ男に抱きついていった。
「辰哉さん」
男は突飛な姿子の行動に面食らった。
「わたしほうぼう探しましたのよ。どちらへいってらっしゃったの。でもいいわ、こうして戻ってきてくださったんですもの」
「あの・・・・」
何かを言おうとする男の声にも姿子は取り合わない。
「いやよ。いや、もうわたくしを置いてどこにもいらっしゃらないで」
縋り付く姿子のうなじに掛かる後れ毛が、えもいえぬ色香を醸し出し、男を惑わす。
姿子は辰哉の腕に抱かれて眠る幸せな夢の中にいた。
眠りから覚めた姿子は、隣に眠る男に気がついた。
「あぁ、まただわ。辰哉さんじゃない。あの人はどこへいってしまったのかしら・・・・」
物憂げに溜息を漏らし一人言葉を続けた。
「そうだわ、またあの女が・・・」
いいかけて姿子は、はっとしたような顔をする。
「あの女?あの女って誰の事だったかしら」
目を覚ましても姿子の心は非現実な世界を彷徨い続ける。
数日後、近くの橋の袂から男の土左右衛門があがる。人だかりの中、通りがかった姿子はそれを遠い目で見つめていた。
辰哉を失ってからの姿子は眠りに落ちてもその眠りは浅く、夜更けに目が覚める。
あの日、辰哉の後をすぐにでも追わなかった自分を悔いる姿子はそのまま夜の闇の中にさまよい出る。
人気の殆どない道をひたひたと姿子の足音だけが響く。
「おねえさん」
そんな姿子を呼び止める声があった。
今まで目は開いていても、心虚ろだった姿子がその声には現実的な反応を示した。
低く柔らかい懐かしい声。辰哉の声そのものだった。
焦点が定まりはっきりとした像を映す。学生風のまだ若い男性が頬を紅潮させて姿子の背後に身体をくの字に曲げて立っている。身体が曲がっているのは息があがっているせいだ。
夜更けに歩く姿子の姿を橋を挟んだ通り向こうから見つけ、違和を感じ走って追いかけてきたのだ。
しかし、少々酒が入っていたので一気に酒精が 血管を巡りそれ以上言葉が続かずにその場に座り込んでしまっていた。そんな男の姿に姿子は驚いた声を出した。
姿子が人間らしい感情を出したのは久しぶりの事だった。
「どうなさったの、あなた、こんな夜更けに大丈夫?」
「ご・・・ご婦人が・・・こ・・こんな夜更けに一人・・歩・・きは・・・感心・・し・・ま・・せ・・・」
息をつきつき、口にするがそれ以上は声を出すことが出来ない。激しい動悸に足も立たない。
「あぁ大変」
ぐったりした男に姿子は慌てた。
「そうだわ、わたしのお店がすぐそこですの。肩をお貸しするからもう少し頑張って下さいな」
男の片方の腕を肩に回し、姿子は力を込めて男を支えるとよろよろと歩き出した。
肩越しに姿子の良い香りが男の鼻をくすぐった。
小さな小料理屋に辿り着く。小さな店内を通り抜け、奥の間に続く上がり口の板間の上でこれ以上は無理だ、と言う風に手を振りその場で寝転がった。
あえぐ声に心配した姿子は奥から布団を取り出して男の身体にかけて、その場でじっと男の様子を窺った。
やがて苦しそうだった男の息が落ち着くと小さな寝息へと変わる。
その様子に姿子は安堵の息を漏らした。
一刻ほど眠っただろうか、良い香りの中で男は目を覚ました。と、同時に跳ね起きた男の目の前に姿子が姿を表した。
良い香りの正体は姿子の持つ飲み物だった。
酔いは程よく醒めていた。
「お顔の色もいいわ。これ、お飲みになる?」
男は優しく笑う姿子を前に、自分の醜態を恥じて言葉が出ない。
カップには琥珀色した液体が注がれる。
「これは?」
「こぉひぃですわ。一口飲んでみて」
男は勧められるままに口を付けた。
「不思議な味だ」
「これにこうしてお砂糖を入れるの。・・・さぁ、もう一口飲んでみて」
男は言われるままに口に含む。
「甘いでしょ。・・・次はね、こうやってミルクを入れるのよ。さあ・・」
まろやかな味わいが口中に広がった。
「うまい!」
姿子は男の様子を微笑んで見ている。
「こんなハイカラな飲み物は初めて飲みました。これがこぉひぃか・・・僕の田舎にはない」
姿子は着物の袖で口元を押さえてくすくすと笑う。
カップを置くと男は姿勢を正すと勢いよく頭を下げた。
「面目次第もございません。ご婦人が夜更け出歩く姿に、心配して声をかけたものの、かえってこのようなご迷惑をお掛けする事になって・・・」
男は大層、恐縮して縮こまっている。
「あら、迷惑だなんて・・・、ね、頭をあげて下さいな。わたくし、少しも迷惑だなんて思っていませんわ。それどころかいつもと違う事柄に楽しかったくらいですわ。そんな風に気に病まれてしまっては、反対に申し訳なくなりますわ」
姿子に手を述べられて男は顔をあげた。
にっこり笑っている姿子に少し照れ笑いをみせた。
「僕は結城竜真と言います。あの、あなたは・・・」
「姿子ですわ」
「姿子さん。では、改めて礼を述べます。ありがとうございました」
辰哉の声で呼ばれた自分の名前に姿子の心が震える。
「こんなところに小料理店があるなんて気がつかなかったなぁ」
「ほほ、だってひっそりとお商売をしているんですもの」
「ご婦人のお宅に深夜遅くいつまでも留まるのは失礼です。僕はこれで失礼します」
別れの言葉に姿子の顔が少し曇った。辰哉の声をいつまでも聞いていたいと思った。
「・・・あの」
言葉を口ごもる竜真に姿子が次の句を促した。
「なぁに?」
「また・・・お伺いしても宜しいですか?・・・その、ご迷惑でなければ」
「迷惑だなんて、嬉しいわ。こんなおばさんのお店でよければ是非また寄ってくださいね」
若い竜真からみれば三〇歳を越える姿子は十分おばさんと呼ぶ歳だった。
「おばさんだなんて、姿子さんはお若くてとてもお綺麗なご婦人です」
「まぁ」
竜真の言葉に思わず姿子の頬が染まる。
「あの、失礼します」
竜真も言葉と同時に真っ赤になった顔を隠すように駆け出した。
去る竜真の後ろ姿を見送りながら姿子の胸には不思議な感情が芽生えていた。
竜真は足繁く姿子の店に通った。
そして、たわいのない話をしては帰っていく。竜真がやってくるようになってから姿子の夜歩きはぱったりと無くなった。
姿子は竜真の訪れを心待ちするようになっていた。
二人の絆は日を追う毎に強くなっていく。
ある日の竜真はヴァイオリンを手にして現れた。
「あら、竜真さんはヴァイオリンを弾くことが出来るのね」
「僕の専攻は本当はピアノなんですが、ピアノを持ってくるわけには参りませんのでこいつで代用です。姿子さんにお贈りしたい曲があるんです。聴いてください」
「ピアノ・・・竜真さんは音楽学校の生徒さんだったのね。わたくしったら竜真さんのことを何も知らないのね」
姿子の言葉に竜真の笑顔が少しだけ曇った。
手早く調律を済ませるとゆっくりと息を吸い込むと弓を弦に当てた。
弦の上を滑る弓は美しい音色を奏で出す。切なさを秘めたその響きは姿子の心を揺さぶった。
はらはらと姿子の涙がこぼれ落ちる。
竜真はそっとハンカチを差し出した。
「あら、わたくしったら・・・、あんまり素敵な音色だったので感極まってしまったわ」
姿子はハンカチを目に当てた。竜真はそんな姿子をじっと見つめている。
「そんなに見つめられたら、恥ずかしいわ」
竜真の視線を避けるかのように姿子は顔を逸らした。
姿子の前に跪くと手を取った。
「姿子さん、あなたの目が他の誰かを見つめているのは知っています。でも、僕のことも考えては頂けないでしょうか」
「竜真さん?」
突然の竜真の言葉に姿子は竜真の方へ再び顔を向けた。
姿子の目はもう辰哉を見つめてはいなかった。
「こんな歳の離れたおばさんをからかってはいけませんわ・・・」
真剣に受け取ろうとはしない姿子に竜真の声が少し大きくなる。
「姿子さん、僕は本気なんです」
俯いて黙ってしまった姿子に竜真は楽器を手早くしまうと帰り支度を始める。それを姿子は目の端で追った。
「今日はもう帰ります」
情炎について・・・とか
2008-12-31
さて、情炎も『茅子』『姿子』と続けば残りは・・・・そう、『辰哉』(笑)
情炎シリーズも(シリーズだったんかいっ!)残り一作となりました。
でも、辰哉は茅子、姿子を読んでなきゃ、設定が生きてこないなぁ(^^;)
うーん、遙かいにしへ・・・も書かなきゃ・・だし、今、頭の整理でちょっと大変です。
いろんな設定がごちゃまぜになっている状態です。
遙かは佳境の筈なのに、寄り道をしたのでちょっとイメージが遠のいています。
どっちもファンタジーっちゃ、ファンタジーだけど全然方向性が違うものを書いていると、こういう事はままあります。
え?他の方はない・・・。すみません。未熟なので・・・・。
次は四章・・・・。
その前に『人外魔境 外伝』 を間に入れるかも知れません。
何ていうか、凄い散漫ですね。
いろんな世界に挑戦したいと思っているんですが、自分では判断できないので本当に出来ているのだろうか?とふと不安になります。
まあ、地道にゆっくりとでも積み重ねていけば自分自身の中で結果がどこかで出るでしょ。
自分本位な趣味の世界に焦りはありません。
あ、姿子 弐は今晩〇時前にアップします。(予約)
【短編】情炎 ~姿子~ 弐
2008-12-31
姿子は竜真が帰った後も座ったまま微動だにせずに考え込んでいた。竜真の告白に本当のところ姿子の胸は高鳴っていた。真っ直ぐな竜真のその胸の中に飛び込んでいきたい衝動がこみ上げてくる。
そんな姿子を押し留めたのは、あの日竜真の声で現実に呼び戻されるまでの長い空白の時間だった。
曖昧な記憶は確かな不安となって目の前に立ちはだかる。
次の日竜真は訪れなかった。
コトリ、木戸の開く音がした。
心を置き忘れた虚ろな姿子が再び夜の闇の中に彷徨い出る。
その姿子が目を醒ましたのは辰哉の屋敷跡だった。今では住む人もなく朽ちた家屋に荒れた庭。
「わたくし、どうしてこんな所に・・・・」
さわさわと風が草木を騒がせる。
姿子の視線が一点を捉えた。
傾きかけた蔵の戸がまるで姿子を呼ぶようにぎしぎしと音を立てて開閉を繰り返している。
心の中で、行ってはいけない、と何かが叫んでいるのに、まるで引き寄せられるかのように姿子の足はそこへと向かう。
ごくりと生唾を飲み込んで中を覗き見た。
「あぁ・・・」
悲鳴にも似た声をあげる。
姿子はどこをどう歩いたのか、気がつけば自分の家に戻ってきていた。
ぼんやりと店のテーブルに着き、当てもなく窓の外を見つめる瞳が映し出すのは、今し方見てきたばかり恐ろしい光景だった。
姿子は目を覆う。しかし映っているのは現実の世界のものでなく脳裏に焼き付く光景。
それを消し去る事は出来なかった。
姿子の途切れていた記憶が徐々に蘇る。
青ざめる顔に手を当てた唇は恐怖で紫色に変わっていく。
「姿子さん」
竜真の声がした。
「姿子さん」
姿子の瞳が目の前に立つ竜真を捉えた。
「どうしたんです。一体・・・何度声をかけても返事がない」
ふと時計を見るといつも竜真が訪れる時間となっていた。
姿子の反応は鈍い。竜真の存在を認めると微笑みかけた顔がこわばりその手を払って後ずさった。
座っていた椅子が大きな音を立てて倒れる。
驚きの眼差しを向ける竜真に姿子は唇を噛みしめて大きく頭を振った。
「わたくしに近寄ってはなりません」
しかし竜真はその言葉が聞こえないように姿子に近づいてくる。姿子は距離を保ちまた一歩下がる。
「お願いだから近づかないで・・・・」
姿子は懇願するように両手を合わせた。姿子の脳裏に過去の記憶が鮮やかに蘇る。
辰哉を失った姿子の心の隙間に一人の男が付け込んだ。
妻帯者であるに関わらず貪欲な男は虚ろな姿子を貪り続ける。ある日、女の存在に気づき逆上した男の細君は姿子の元へと乗り込んでくるなり手にした刃物で男もろとも姿子を滅多刺しにしたのである。
何カ所も、何十カ所も刃の切っ先を打ち込まれ続け、姿子の現世での記憶はそこで途切れた。
辰哉だけを求める魂は、呪縛となって姿子をこの世に止まらせた。姿子の魂はそれとは知らず幾年も罪を重ね続ける。
竜真の声に自分自身に引き戻されるまでの罪の証があの蔵の中にあった。
晒された数多の髑髏には姿子の全ての記憶が刻まれていた。
いつの間にか辰哉ではなく竜真が姿子の心の大半を占める今、姿子は己の罪深さに肩を震わせた。
「わたくしと貴男では住む世界が違います。どうかお忘れになって・・・・」
竜真にはそれが姿子の真意でないことに気付いていた。崩れそうな姿子の細い肩を抱き寄せようとする。
それを激しく拒絶する姿子。
「わたくしはこの世の者ではありません。それに・・・それに、貴男に触れて頂く資格もない恐ろしい女でございます」
姿子の口にする言葉に竜真が頷いた。
「思い出したんですね」
思いも寄らない言葉に姿子はやっと竜真の方へと顔を向けた。
「なに・・・」
「ああ、でもまだ抜けている」
残念そうな顔をして言う。
じっと見つめる竜真の深い眼差しに吸い込まれ姿子は再び記憶の淵に立った。現世との別れ、あの最期の日。
姿子を見捨て逃げ惑う不誠実な男。狂喜しながら自分を刺し続ける女。
姿子の記憶はもう一つの影を映しだした。
姿子を慕い通い続けていた音楽院生。名前も思い出せない、顔も朧だったその人の存在をはっきりと意識したのは姿子の息が絶える寸前だった。
姿子の身体を庇い夥しい血を流す男の姿。決して姿子の上から離れようとはしなかった。
大きく見開かれた姿子の瞳は今、目の前にいる竜真を凝視する。
「姿子さん、例え貴女の心に辰哉さんしか棲んでいなくとも、僕はずっと貴女が好きだった」
誠実な姿、一途な心、姿子は竜真の胸に縋りついていた。
竜真は腕の中にすっぽりと収まった姿子の身体を力強く抱き締めた。
「教えてください。今の貴女の胸の内を・・・」
「何故・・・・貴男の将来を奪ったも同然の女にどうしてそれほど」
「理屈じゃない。ただただ貴女だけが愛おしい」
強く見つめる瞳に逆らうことなど出来なかった。
「お慕いしております。今では辰哉さんよりも誰よりも何よりも」
姿子はやっと胸の内を明かした。
竜真は姿子のその一言に至上の幸福感を噛みしめていた。
しかし、自分の罪を思い出した姿子には竜真の腕に抱かれているのが苦しかった。
「でも、わたくしは・・・・」
竜真は姿子の苦しみを思い顔を歪めた。
「貴女が苦しむことは目に見えていたのに、この世に留まるあなたの業を止めることが出来なかった僕を許してください。僕の声はどんなに叫んでも貴女の心に届かなかった。でも、もう止めにしましょう。これ以上あなたが苦しむ事はない。一緒に行きましょう」
姿子は竜真の胸にそっと手を当てて身体を離した。
「もう、十分ですわ」
「姿子さん?」
「わたくしには償わなければならない罪があります。貴男と同じところへ上がっていく事は出来ません」
竜真は姿子の手を取った。握られた手に力がこもる。
「姿子さん、僕の思いはそんなに簡単なものではありません。貴女が落ちると言うのなら、煉獄までもお供いたしましょう」
「竜真さん」
「何、遠慮する事はありません。僕は貴女の為にだけ存在したい」
強く深く自分だけを思ってくれる竜真に姿子の心の闇がゆっくりと溶けていく。
手を取り身体を重ね二人の姿は螺旋を描き一筋の光となって彼方へと吸い込まれていった。
-終-